コスト削減の代償
愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会では、国旗や国歌、選手の輸送、宿泊など、さまざまな運営上の問題が報じられています。
もちろん、大規模な国際大会では一定のトラブルは避けられません。
論点の一つ「愛知・名古屋は、そもそもこれほど大規模な国際大会を運営する体制を十分に構築できていたのか」という点です。
特に注目したいのが、徹底したコスト削減です。
選手村を作らない異例の方式
当初は名古屋競馬場跡地に約1万人規模の選手村を整備する計画でした。
ところが2023年、組織委員会は選手村を整備しない方針を決定。
その代わりに、一般ホテル、クルーズ船、コンテナ型宿泊施設などを組み合わせて選手を受け入れる方式となりました。
選手村を一か所に集めれば、「宿泊→食事→輸送→警備→選手間の交流」をまとめて管理できます。
それを分散させれば、当然ながら管理する側の仕事は増えます。
ホテルごとの調整、選手の輸送、食事、警備、練習会場への移動など、複数の事業者・施設を横断して管理する必要があるからです。
約1,020億円の削減
愛知県は、選手村の中止や競技会場の見直しなどによって、約1,020億円の削減を行ったと説明しています。
もちろん、税金を使う以上、無駄な支出を減らすことは重要です。
問題は、「建設費を削った結果、運営が複雑になり、その管理コストやリスクが増えていないか」ということです。
選手村を作らない。
既存施設を利用する。
競技会場を分散する。
こうした方法は、一見すると合理的です。
しかし大きな大会は通常のイベントとは違います。
数万人規模の選手・関係者を動かし、競技時間も日によって異なります。
宿泊場所が分散すれば、輸送も複雑になります。
競技が深夜まで延びれば、当然ながら宿泊施設や輸送にも影響します。
つまり、「施設にお金をかけない代わりに、人とシステムで管理する大会」になったわけです。
分業そのものは問題ではない
大規模な国際大会で、多数の企業や専門業者が分担すること自体は珍しくありません。
問題は、その上に立って全体を管理する組織です。
今回も大会組織委員会という統括組織が存在し、各部門・各事業者を管理する体制は作られていました。
それでも、
- 国旗掲揚のトラブル
- 国歌の取り違え
- 選手輸送の混乱
- 宿泊関連の問題
- 深夜に及ぶ競技
などが相次いだことを考えると、「各担当者が仕事をする」だけではなく、部門を横断した最終確認が十分だったのかという疑問が残ります。
特に国際大会では、国旗や国歌のような基本事項は、本番前に何度も確認するべき項目です。
「安く作る」ことと「安く運営する」ことは違う
今回の大会で考えさせられるのはここです。
施設を削減すれば、建設費は減ります。
しかし、
施設を削る
↓
会場・宿泊施設が分散する
↓
輸送・警備・食事の調整が増える
↓
関係する事業者が増える
↓
情報共有が複雑になる
↓
統括・確認の負担が増える
ということになります。
つまり、建設費を削ったからといって、大会全体のコストや運営リスクが同じ割合で減るわけではありません。
むしろ、今回のような巨大大会では、現場を管理する「人」「時間」「情報共有」に大きなコストがかかります。
愛知県の「運営能力」が問われる理由
今回の問題だけを見て、「愛知県には大会運営能力がない」と断定することはできません。
一方で、これだけ大規模な大会を経験したことのない自治体が、従来とは違う「コンパクトな大会方式」を採用した以上、
その方式を支えるだけの統括能力・危機管理能力を本当に備えていたのか
は検証されるべきでしょう。
特に重要なのは、「誰が悪かったのか」だけではありません。
なぜ本番前に問題を発見できなかったのか。
ここを検証しなければ、同じ問題は別の大会でも繰り返されます。
今回のアジア大会は、単なる「国旗を間違えた」「バスが遅れた」という個別トラブルの集合ではなく、
コスト削減を優先した大会設計と、それを支える運営・統括能力のバランスが適切だったのか
を考える機会になったのではないでしょうか。
日本の恥を世界にさらしてしまった、トップの大村知事には、検証し頂きたい問題です。


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