インタビュー(堂場瞬一さん)

2018年5月29日

● インタビュー ● 「策謀 警視庁追跡捜査係」  堂場瞬一さん
2011年
20160927close/BOOKSERVISEサイト転記(テキストのみ)

堂場 瞬一さん (どうば しゅんいち)
プロフィール
1963年茨城県生まれ。
青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。著書多数。

堂場瞬一さん、作品集

「警察小説」と「スポーツ小説」の接点にあるもの。

堂場さんは今年で作家生活十年。
その間、圧倒的な支持を得て
出版は間もなく50冊を超える。
その本の魅力は。そして作家を著作に駆り立てるテーマとは。

――今なぜ「警察小説」が人気なのでしょう。
刑事が活躍するミステリーは昔からありました。今は、“事件”の面白さに加えて、刑事を取り巻く“組織”を描いていることが読者の心を捕えているのだと思います。警察は「組織オブ組織」。個人と組織の軋轢など、典型的な問題点が現れやすい。悩む刑事に、現代のサラリーマンは親近感を抱くのでしょう。
小説の書き手にとっては、非常にエゴを描きやすいという面白さがあります。自分のエゴ、組織のエゴ。そのエゴは必ずしも一致しないし、一致して二乗になるという怖い場面もある…。
でも、僕は「警察小説」を書いているという意識は案外ないんですよ。「警察小説」という言葉が普通に使われ出したのは、たぶん今から5年ぐらい前。「刑事・鳴沢了シリーズ」は2001年に始まりました。僕自身は今でもハードボイルドという気持ちです。もうあまり使われない言葉ですが(笑)。ハードボイルドは、一人称の文学か一視点の文学。主人公の心理に僕の関心は向かいます。
「警視庁追跡捜査係シリーズ」は主人公が二人だから、あえてハードボイルドだとは強調しませんけれど。『アナザーフェイス』のシリーズは、キャラクターの設定がヤワイから、ソフトボイルドかな(笑)。

――何本かのシリーズが同時進行しています。
いろいろな人間を書いてみたいんですよね。設定とキャラクターづけを変えて、シリーズそれぞれの個性を出しながら。
でも、キャラクターといっても当初予定していなかった方向に行動がいってしまうこともある。“お約束”のキャラでありながら、そこからはみ出していくのが、シリーズものの醍醐味かもしれません。大人になっても人は変わる。関わった事件に影響を受けてどう変わるのか。その変化を、シリーズものは一人の人物を通して描けます。そういう意味では1冊目から読んでいただけるとありがたい(笑)。
僕の場合、小説を書くときはストーリーの前に“シチュエーション”があります。誰が何をする、という話の前に、何々をした誰それという「人」がいる。それに別のシチュエーションが絡んで話が転がって行く。最新刊『策謀』では、いきなり「なぜか帰って来た男」です。なぜ消えたのか、なぜ帰れなかったのか、なぜ突然帰国したか。そこから話の肉付けが始まりました。彼の「策謀」がうまくいったかどうかは、どうぞ読んでみてください。

――デビュー以来「スポーツ小説」も評判です。
実はスポーツジャーナリストになろうと思った時期もありました。夢で終わりましたが、スポーツ小説は一種の代償行為かな(笑)。ノンフィクションぽいフィクションを目指しています。フィクションだから書けることがいろいろあります。
スポーツ小説というと、若い主人公がスポーツを通して成長していくという定番がありますよね。爽やかで読者に受ける。でも僕は“子ども”には興味がないのです(笑)。頂点を極めて頂点を転がり落ちる一歩手前ぐらいの人に関心があります。スポーツ選手というのはエゴが肥大化していて、最終的には「お前さえいなければ」の世界。でも人に勝ちたいというのは、人間の基本的な欲望。それを書かない手はない。
“爽やかじゃないスポーツ小説”は一般受けしないかもしれませんが、ジャンルとして定着させたい。競技のシーンを書くのは辛くて、ひたすら妄想力で膨らませていますが。

――これからのご予定は。
シリーズものは続けますが、その枠に入らない小説を考えています。大きな事故が起きて、それに関わる人の人生がどう変わっていくか、という連作中編です。
それと自分なりに平成という時代を考えてみたい。もう平成も23年です。平成とともに社会に出た二人の主人公を通して時代を描こうと構想中。
今後もテーマになるのは、いろいろなジャンルで人間のエゴを突き詰めてみたいということ。それと、物語の邪魔をしない文章を磨くことでしょうか。原稿は結構、推敲します。初稿をみると余計な比喩や言い回しでカッコつけている。水みたいな文章を書こうと最近はとくに意識しています。

――もし、初めて堂場さんの小説を読むとしたら、おすすめは。
スポーツものでしたら『大延長』(実業之日本社)が読みやすいでしょう。高校野球が舞台で、ちょっと先ほどのエゴの話とは違うのですが。警察ものなら『交錯』がストーリー的に馴染みやすいと思いますよ。