日韓エネルギースワップとは。通貨スワップとの比較。
【日韓エネルギースワップってなんぞや?】
日本には全くメリットが無いと言われている「日韓通貨スワップ」100億ドル相当の上限が設定されている。
先日行われた日韓首脳会談(高市首相と李在明大統領による会談)において、原油・石油製品・LNG(液化天然ガス)の相互融通(スワップ・取引)を進めることで合意しました。
ネットなどでは「また日本が損をして韓国を助けるだけの内容では?」という声も散見されます。かつての「通貨スワップ」のイメージが強いため、そう感じるのも無理はありません。とブログを書いている自分も調べるまでそう思っていた。
今回の「エネルギースワップ」は状況が異なります。
現在の緊迫する中東情勢を踏まえると、むしろ資源の無い日本が「自国を守るための保険」として結んだ、極めて実利的なディール(取引)という側面が見えてきます。
今回は、公開されているデータを基に、双方のメリット・デメリットを公平な視点で探ってみました。
そもそも「エネルギースワップ」とは何か?
今回の合意は、お金を貸し借りする「通貨スワップ」とは違い、「エネルギー資源(原油・ガソリン・ジェット燃料・LNG)が逼迫した際、お互いに融通し合う仕組み」です。
具体的には、以下の2つが大きな柱となっています。
石油製品の輸出規制の抑制、危機時でも、お互いへの輸出を止めない約束
LNG船の行き先変更、寒波などでガスが足りない際、洋上のタンカーの行き先を互いの国へ融通し合う
日本側の明確なメリット
ジェット燃料など「石油製品」の供給停止を防ぐ
日本は国内の製油所の閉鎖が相次ぎ、原油をガソリンやジェット燃料に精製する能力が落ちています。そのため、不足分を海外から輸入していますが、日本の石油製品輸入のうち約36%(最大のシェア)は韓国産です。
中東情勢の悪化(ホルムズ海峡の通航制約など)で世界的に燃料が不足した際、この協定がないと韓国政府は「自国優先」で日本への輸出を止めてしまうリスクがあります。今回の合意は、「有事でも日本への供給の蛇口を閉めないでくれ」という日本側の防衛策です。
冬場の電力危機(大停電)を回避できる(過去に実績あり)
日本と韓国は、どちらも世界有数のLNG輸入国です。
実は過去の冬、日本で猛烈な寒波と火力発電所のトラブルが重なり、「大停電(ブラックアウト)」の一歩手前までいった際、日本のJERAなどが韓国ガス公社(KOGAS)に依頼し、日本行きの予定ではなかったLNG船を急遽日本に回してもらい、危機を乗り切った実績がすでにあります。隣国だからこそ、数日で届くという地理的メリットは日本にとって生命線です。
東日本大震災時の「恩返し」の土台
2011年の東日本大震災で日本の原発が全停止した際も、韓国側は自国向けのLNGタンカーを最優先で日本に融通してくれました。当時、韓国側は「過去に我々が困った時、日本企業が何度もガスを融通してくれた。今度は我々が恩返しをする番だ」として決断しています。今回の合意は、こうした民間の「持ちつ持たれつ」のルールを国家間でも公認した形です。
デメリットや懸念されるリスク(公平な視点)
とはいえ、日本にとって良いことばかりではありません。懸念されるリスクも存在します。
・韓国は政権が変わると前政権の合意を覆す傾向があり、有事の際に本当にこの約束が履行されるかという不確実性があります。
・日本側が「差し出す」リスク。韓国側で深刻なエネルギー不足が起きた場合、日本の備蓄を融通せざるを得なくなり、日本国内の供給が一時的にタイトになる可能性があります。・
・国内世論の反発。「スワップ」という言葉へのアレルギーが強いため、政策の意図が正しく伝わらず、政府への不信感に繋がりやすい点です。
通貨スワップとの決定的な違い
批判の多かった「通貨スワップ」と、今回の「エネルギースワップ」の違いを整理すると、性質が真逆であることが分かります。
通貨スワップ:
金融危機時に「外貨(ドルなど)」を融通する。外貨準備高や経済規模の観点から、日本が韓国を「助ける」色合いが強く、日本側のメリットが薄いと批判された。
エネルギースワップ:
物理的な「資源」を融通する。資源自給率が極めて低く、島国でパイプラインも持たない日本にとって、「物理的に一番近い国」と資源を融通し合える環境を作ることは、生き残りのための安全保障である。
現実的な保険
今回のエネルギースワップは、どちらかが一方的に得をしたり損をしたりするものではありません。
資源を100%近く海外に依存している日韓両国が、「中東有事や異常気象という、1国では抱えきれないリスクを、2国で分散して支え合う保険」と言えます。
メディアでは「日韓協力」という政治的・感情的な側面ばかりがクローズアップされがちですが、経済安全保障の観点から見れば、非常に現実的で合理的な実利の取引である、というのが冷徹なファクトに基づいた結論です。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません